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A02ICPC-2 · 7.0公開済み

悪寒

筆者の題名:受診理由としての寒気・ふるえ

A · 全身および部位が特定できないもの
別名
寒気が止まらない体がぞくぞくして震える寒くてガタガタする
症状ノート
悪寒

🧠 受診理由としての寒気やふるえは、患者の主観的な訴えの記録であり、単独で特定の感染症や起因菌を確定するものではない。 悪寒の臨床的評価と区別しながら、受診記録の特性を捉える。

訴えの表現と受診記録の違い

記録・表現のあり方 臨床上の解釈における注意 受診理由としての位置づけ
寒気・ぞくぞく感(主観的訴え) 体温上昇に伴う自覚症状であり、原因疾患を一つに特定できない 受診理由の枠に記録された出発点であり、最終診断そのものではない
全身のふるえ(悪寒戦慄) 菌血症との関連が強い所見とされるが1、薬剤熱などでも生じうる2 身体所見の重みと、診療録の主訴枠への記載の有無は必ずしも一致しない
併記のない単独記録 他の症状がなかった証拠(陰性所見)とはみなせない 他の症状が主訴枠から省かれた可能性があり、臨床像全体を代弁しない

寒気やふるえを理由に受診した記録は、問診や診察で把握される詳細な重症度分類(上着が必要な程度か、毛布を重ねても全身が震えるかなど)をそのまま反映しているとは限らない1。全身の強い震えを伴う悪寒戦慄は菌血症との関連が極めて強い一方、薬剤熱などの非感染性病態でもしばしば生じうる2。さらに、発熱や寒気に伴い圧迫しても消退しない紫斑や点状出血、項部硬直や意識障害を認める場合は、髄膜炎菌感染症や細菌性髄膜炎を強く疑い直ちに病院へ搬送する必要がある3。

表示できる診断分布がない意味

米国の受診理由モジュールにおいて、本コードはプライマリケア診療所および救急外来のいずれでも提示基準を満たす第一診断カテゴリが存在せず、専門科診療所では集計そのものがない。これは統計上の提示基準を満たす単一カテゴリがなかったことによる非表示であり、日常診療において寒気やふるえを訴える疾患が稀であることの根拠にはならない。

提示基準を満たす診断がないことは、寒気を訴える疾患が稀であることや、重篤な病態が存在しないことを意味しない。診療現場では、寒気やふるえが他の全身症状や局所症状と組み合わさって評価されることが多く、主たる受診理由として単独で独立して抽出・集計されにくい背景などが考えられるが、その要因を受診経路や診療体制の違いとして安易に断定することはできない。

この集計は米国の調査に基づくものであり、受診行動や医療提供体制が異なる日本やハンガリーなどの他地域へそのまま移植・適用することはできない。

見逃し時の損失が大きい状態

頻度の高さではなく、見逃したときの損害と判断までの猶予で選んだ項目です。確率は併記しません。対応は、各ガイドラインが明示している内容だけを書いています。

  • 即時

    寒気や発熱とともに、2 mmを超える出血性・非消退性の紫斑、急速に進行・拡大する点状出血・紫斑、または頭痛・項部硬直・意識変容などの髄膜刺激症状を認める

    髄膜炎菌感染症細菌性髄膜炎敗血症性ショック

    髄膜炎菌感染症や細菌性髄膜炎を強く疑い、直ちに救急で病院へ搬送する(NICE NG240勧告1.1.9、1.1.13)。発疹がないことだけで髄膜炎菌感染症を除外してはならない(勧告1.1.10)。

  • 当日

    厚い毛布をかけても全身が激しくガタガタと震える(悪寒戦慄:shaking chills)を伴う急性発熱

    菌血症重症細菌感染症

    悪寒戦慄は急性発熱成人における菌血症のリスク比が12倍(調整済みリスク比12.1、高い特異度)と強く関連するため、直ちに血液培養2セットの採取と感染巣の検索を行う。ただし悪寒戦慄の存在は薬剤熱などの非感染性病態でもしばしば生じうるためこれを除外しないことにも留意する。

参考文献・資料

  1. 1.The degree of chills for risk of bacteremia in acute febrile illness(The American Journal of Medicine・2005)抄録のみを閲覧した(購読誌で全文は未取得)。主要な数値はすべて抄録に逐語で載っている。救急外来を受診した急性発熱の成人526例を対象とした単施設の前向き観察研究で、悪寒の程度を「上着が必要な程度の寒気(mild chills)」「厚い毛布が必要(moderate chills)」「厚い毛布をかけても全身が震える(shaking chills)」の3段階に定義したことを確認した。菌血症は40例(7.6%)、悪寒戦慄65例(12.4%)・中等度100例(19%)・軽度105例(20%)。悪寒なしを基準としたポアソン回帰の調整済みリスク比は悪寒戦慄12.1(95%CI 4.1〜36.2)、中等度4.1(95%CI 1.6〜10.7)、軽度1.8(95%CI 0.9〜3.3)である。悪寒戦慄の特異度は90.3%(95%CI 89.2〜91.5)、陽性尤度比4.65(95%CI 2.95〜6.86)、悪寒が無いことの感度は87.5%(95%CI 74.4〜94.5)、陰性尤度比0.24(95%CI 0.11〜0.51)。なお本論文には「A word on chills」(Am J Med 2007年120巻2号e21、著者回答e23)という書簡が付いており、この書簡は抄録が無く今回は取得できていない。閲覧 2026-09-08
  2. 2.Drug fever: a narrative review(Annals of Clinical Epidemiology・2023)全文(PMC10944987)を取得して確認した。悪寒戦慄について本総説は「Shaking chills, defined as chills accompanied by shaking of the generalized body (rigor) despite wearing a thick blanket, are strongly associated with bacteremia. However, shaking chills can also occur in drug fevers, yielding 36–51%. Therefore, the presence of shaking chills does not exclude a diagnosis of drug fever.」と述べており、悪寒戦慄の存在は薬剤熱を除外しない。薬剤熱の特徴とされる「不釣り合いな健康感(inappropriate sense of well-being)」については、抗菌薬による薬剤熱11例のうち3例で「全身状態の低下」が観察されており、しかもその定義が示されていないとして「Whether an inappropriate sense of well-being can help to diagnose drug fever remains to be determined.」と保留している。原因薬の開始から発熱までの時間は、各種薬剤をまとめた症例集積で中央値2〜8日、薬効群による幅が大きく抗菌薬は1〜5週(最も多いのは1〜2週以内)、抗腫瘍薬は3〜4日である。単一の徴候や検査で薬剤熱を診断も除外もできず、皮疹の不在も好酸球増多の不在も除外の根拠にならないことも確認した。閲覧 2026-09-08
  3. 3.Meningitis (bacterial) and meningococcal disease: recognition, diagnosis and management (NG240)(National Institute for Health and Care Excellence・2024)NICE NG240(2024年3月発行)の勧告1.1.9、1.1.10、1.1.13を本文で確認した。2 mmを超える出血性・非消退性の発疹(紫斑)、急速に進行・拡大する非消退性の点状・紫斑性の発疹、または細菌性髄膜炎の症状・徴候(発熱、頭痛、項部硬直、意識・認知変容)と非消退性の点状・紫斑性の発疹の組み合わせがある場合は髄膜炎菌感染症を強く疑い(1.1.9)、救急で病院へ搬送する(1.1.13)。発疹がないことだけで髄膜炎菌感染症を除外してはならない(1.1.10)。閲覧 2026-10-16