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A03ICPC-2 · 7.0公開済み

発熱

筆者の題名:受診理由としての発熱

A · 全身および部位が特定できないもの資料確認
別名
熱が出た熱っぽい子どもの熱が下がらない
症状ノート
発熱

🧠 受診理由としての発熱は、症状としての発熱と同じものではない。 症状ノートの発熱は「体温の設定点が上がった状態」という機序と、高体温との区別から始まる。一方、受診理由 A03 は、受診したときに患者や保護者が述べた訴えである。同じ語で呼ばれるが、数えているものが違う。

このノートが持つのは、症状ノートには原理的に置けない 3 つだけである。

  • 場ごとの分布: 診療所(プライマリケア)、診療所(専門科)、救急外来を混ぜずに並べる。列ごとに分母が違う
  • 併せて記録された受診理由: 記述統計であり、問診の優先順位ではない
  • 地域への移植性の限界: 米国の受診単位の推定であり、日本・ハンガリーへの適用は未検証

機序、鑑別、不明熱の考え方は症状ノートの担当で、ここでは繰り返さない。

読み方は 2 つある。第一に、場によって表が空になること自体が情報である。診療所(専門科)の列が抑制されるのは、その場で発熱が主な受診理由になる例が少なく、NCHS の提示基準を満たす推定が作れないためで、「発熱が起きない」ことを意味しない。第二に、「見逃し時の損失が大きい状態」は頻度の表とは別の軸である。頻度が低くても、猶予が短く損害が大きい状態は、この表の外で判断する。

見逃し時の損失が大きい状態

頻度の高さではなく、見逃したときの損害と判断までの猶予で選んだ項目です。確率は併記しません。対応は、各ガイドラインが明示している内容だけを書いています。

  • 即時

    5 歳未満の小児の発熱に、消退しない発疹(圧迫しても消えない発疹)を伴う。特に、重症感、2 mm を超える病変(紫斑)、毛細血管再充満時間 3 秒以上、項部硬直のいずれかがあるとき

    髄膜炎菌感染症

    髄膜炎菌感染症を考える。疑われれば、非経口抗菌薬を最も早い機会に投与する。

  • 即時

    成人で、化学療法後などの好中球減少がある患者の発熱

    発熱性好中球減少症

    発熱性好中球減少症として、経験的抗菌薬の初回投与を急ぐ。

    来院時のトリアージから 1 時間以内に初回の経験的抗菌薬根拠:Outpatient Management of Fever and Neut… 2018
  • 即時

    成人で敗血症が疑われる所見を伴う発熱

    敗血症敗血症性ショック

    敗血症性ショックの可能性または敗血症の可能性が高い場合は、抗菌薬を直ちに投与する(強い推奨)。ショックを伴わない敗血症の可能性では、感染性か非感染性かの迅速な評価を、可能なら受診から 3 時間以内に行い(勧告 13)、感染の懸念が続くなら認識から 3 時間以内の抗菌薬投与を提案している(勧告 14、弱い推奨)。

    敗血症性ショックの可能性または敗血症の可能性が高ければ、認識から 1 時間以内を目標に抗菌薬(勧告 12)根拠:Surviving sepsis campaign 2021
  • 即時

    マラリア流行地から帰国した、または訪れたことのある発熱(発熱の既往を含む)

    マラリア

    予防内服の有無にかかわらずマラリアを疑い、ただちに評価する。診断は複数回の血液検体の検査を経るまで除外できない。

  • 当日

    生後 3 か月未満(5 歳未満の小児)で体温 38℃ 以上

    重篤な疾患

    高リスク群として扱う。小児を専門としない医療者(プライマリケア・一般救急外来)では、生命を脅かす状態が疑われれば直ちに緊急搬送し、そうでなくても赤の特徴があれば小児専門医へ緊急に紹介する。

  • 早期

    5 歳未満の小児で 5 日以上続く発熱

    川崎病

    川崎病を評価する。川崎病の特徴(滲出物を伴わない両側の結膜充血、口唇の発赤・亀裂、いちご舌、口腔・咽頭粘膜の発赤、手足の浮腫と発赤、多形性の発疹、頸部リンパ節腫脹)が、発熱の発症以降にあったかを尋ねる。1 歳未満では、発熱以外の特徴が少なくても冠動脈の異常の危険が高いことがある。

場ごとの事前分布

主な受診理由(RFV1)としてこの訴えが記録された受診の、第一診断(DIAG1)の分布です。診断は ICD-10-CM の 3 桁カテゴリで、受診時の記録です。95% 信頼区間を括弧に示します。順位は標本誤差で入れ替わりうるため、 点推定の大小だけで読まないでください。

NCHS RVC: 1010 Fever

pie showData title 救急外来:第一診断の内訳(%)
  "R50 Fever of other and unknown or…" : 22.8
  "B34 Viral infection of unspecifie…" : 9.8
  "J06 Acute upper respiratory infec…" : 8.9
  "H66 Suppurative and unspecified o…" : 5.6
  "J02 Acute pharyngitis" : 5.3
  "その他(上位以外・抑制を含む)" : 47.7

救急外来(非加重 2,439 件)。提示基準を満たした上位の診断だけを描き、残りは「その他」にまとめています。

受診時診断(ICD-10-CM 3 桁)診療所(プライマリケア)診療所(専門科)救急外来
R50Fever of other and unknown origin
抑制—
22.8%19.9–25.8
J06Acute upper respiratory infections of multiple and unspecified sites
17.9%9.8–29.0
—
8.9%7.3–10.7
B34Viral infection of unspecified site
——
9.8%8.1–11.6
H66Suppurative and unspecified otitis media
抑制抑制
5.6%4.3–7.2
J02Acute pharyngitis
抑制抑制
5.3%3.9–6.9
U07Emergency use of U07
——
4.8%3.4–6.5
J11Influenza due to unidentified influenza virus
抑制—
2.9%2.0–4.1
J18Pneumonia, unspecified organism
——
2.6%1.8–3.6
N39Other disorders of urinary system
——
2.5%1.7–3.5
J10Influenza due to other identified influenza virus
抑制—
2.3%1.5–3.3
この訴えが記録された受診数(非加重)8222,439
調査年2018・20192018・20192019・2020・2021・2022

Tier A: 米国 NCHS の公開マイクロデータ(NAMCS・NHAMCS ED)を複合標本設計で集計。受診単位。 「—」はその場の上位の診断に入っていないこと、「抑制」は NCHS の提示基準を満たさないため値を表示しないことを表します。 標準誤差・信頼区間は、匿名化のためにマスクされた公開版の設計変数による推定です。

併せて記録された受診理由

この訴えが(5 枠のどこかに)記録された受診で、同時に記録された受診理由の上位です。記録されていないことは、陰性だったことを意味しません。記録枠・患者の自発的な訴え・記録者の選択に左右されるため、問診の優先順位として読まないでください。

診療所(プライマリケア)

  • RVC 1440Cough53.5%(42.9–63.8)
    非加重 101 件
    • J06Acute upper respiratory infections of multiple and unspecified sites25.2%(17.2–34.8)
  • RVC 1400Nasal congestion36.9%(29.6–44.6)
    非加重 61 件
    • J06Acute upper respiratory infections of multiple and unspecified sites27.0%(17.8–37.9)
    • H66Suppurative and unspecified otitis media14.6%(7.1–25.6)
  • RVC 1455Symptoms referable to throat, raw throat17.1%(10.8–25.2)
    非加重 36 件

救急外来

  • RVC 1440Cough36.9%(34.4–39.4)
    非加重 1,729 件
    • J06Acute upper respiratory infections of multiple and unspecified sites15.1%(12.9–17.4)
    • R50Fever of other and unknown origin10.7%(8.4–13.4)
    • U07Emergency use of U078.6%(6.3–11.4)
  • RVC 1400Nasal congestion16.3%(14.4–18.5)
    非加重 735 件
    • J06Acute upper respiratory infections of multiple and unspecified sites18.3%(14.3–22.9)
    • R50Fever of other and unknown origin15.0%(10.6–20.4)
    • B34Viral infection of unspecified site10.5%(7.6–14.0)
  • RVC 1530Vomiting14.3%(13.0–15.6)
    非加重 720 件
    • R50Fever of other and unknown origin14.3%(11.0–18.1)
    • R11Nausea and vomiting11.6%(8.6–15.2)
    • B34Viral infection of unspecified site9.6%(6.7–13.2)
  • RVC 1455Symptoms referable to throat, raw throat12.5%(11.1–14.0)
    非加重 566 件
    • J02Acute pharyngitis27.6%(22.1–33.7)
    • J06Acute upper respiratory infections of multiple and unspecified sites11.5%(7.9–16.0)
    • R50Fever of other and unknown origin9.4%(6.5–12.9)

この表が動く条件

上の分布を単独で一般化させないための節です。事前確率が大きく動く要因を挙げます。

年齢層
乳児・小児・成人で診断の構成が大きく動きうる軸です。この表は年齢で層別していません。生後 3 か月未満を高リスク群として扱うように、年齢で基準が変わる項目もあります。
併せて記録された受診理由
咳・鼻づまり・咽頭症状・嘔吐が同時に記録された受診の診断分布を、併存の表に別に示します。主訴のみの場合と差があるかは、信頼区間で確認してください。記録されていないことは陰性を意味しません。
既往・服薬
化学療法後の好中球減少や免疫抑制では、同じ発熱でも別の集団として扱います(見逃し時の損失が大きい状態を参照)。
受診経路
初診か再診か、紹介か直接受診かで集団が変わります。紹介受診は、事前の選別を通った後の集団です。
調査年
救急外来のプール値(2019〜2022 年)には、COVID-19 の流行期と、その診断コード(U07)が含まれます。単年の値は示していません。

他地域へ移すときの限界

  • 日本とは受診構造が異なり、米国の「診療所(プライマリケア)」の列を、日本の診療所の分母としてそのまま当てはめることはできません。
  • ハンガリーについては、同じ集計の実測を確認していません。移植性は未検証です。
  • 日本の患者調査などの数値は、受診単位が接続できないため、補正には使っていません。移植性は未検証です。

参考文献・資料

  1. 1.Fever in under 5s: assessment and initial management(National Institute for Health and Care Excellence・2021)NG143(2019 年 11 月公開、2021 年 11 月更新)の勧告 1.2.12(生後 3 か月未満で体温 38℃ 以上は高リスク群)、1.2.14・1.2.25・1.2.26(5 日以上続く発熱は川崎病を評価し、特徴は発熱の発症以降の有無を尋ねる)、1.2.18(発熱と非消退性発疹で髄膜炎菌感染症を考える)、1.4.2〜1.4.3(小児を専門としない医療者への勧告。生命を脅かす状態は緊急搬送、赤の特徴があれば小児専門医へ緊急に紹介)、1.4.10(髄膜炎菌感染症が疑われれば非経口抗菌薬を最も早い機会に)を本文で確認した。対象は 5 歳未満の小児である。閲覧 2026-10-15
  2. 2.Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021(Society of Critical Care Medicine / European Society of Intensive Care Medicine・2021)勧告 12〜14 の本文を確認した。成人で敗血症性ショックの可能性または敗血症の可能性が高い場合は、抗菌薬を直ちに、認識から 1 時間以内を目標に投与することを強く推奨している(勧告 12)。ショックを伴わない敗血症の可能性では、感染性か非感染性かの迅速な評価を行うこと(勧告 13、ベストプラクティス。可能なら受診から 3 時間以内に完了)、懸念が続けば認識から 3 時間以内の抗菌薬投与を提案すること(勧告 14、弱い推奨、エビデンスの質は非常に低い)が書かれている。閲覧 2026-10-15
  3. 3.Outpatient Management of Fever and Neutropenia in Adults Treated for Malignancy: American Society of Clinical Oncology and Infectious Diseases Society of America Clinical Practice Guideline Update(American Society of Clinical Oncology / Infectious Diseases Society of America・2018)抄録で、発熱性好中球減少症の患者は来院時の振り分け(トリアージ)から 1 時間以内に経験的抗菌薬の初回投与を受け、退院前に 4 時間以上観察する、という従来版の合意勧告を引き続き支持していることを確認した。全文は取得できず、抄録の記載による。閲覧 2026-10-15
  4. 4.UK malaria treatment guidelines 2016(Public Health England Advisory Committee on Malaria Prevention / British Infection Association・2016)全文を確認した。マラリアは医学的緊急事態で、疑われる患者はただちに評価すること、予防内服の有無にかかわらず、マラリア流行地から帰国した、または訪れたことのある発熱(または発熱の既往)のある人ではマラリアを疑うこと、診断は複数回の血液検体の検査を経るまで除外できないことを確認した。閲覧 2026-10-15