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A06ICPC-2 · 7.0公開済み

失神

筆者の題名:受診理由としての失神・意識消失

A · 全身および部位が特定できないもの
別名
気が遠くなって倒れた気を失った目の前が真っ暗になって倒れた
症状ノート
失神前失神

🧠 受診理由としての失神は、病態生理や確定診断ではなく「一過性に意識を失って倒れた(あるいは気が遠くなった)」という受診時の記録である。 臨床的な機序、分類、危険徴候の評価枠組みは失神および前失神を参照すること。

診療先による記録の違い

受診理由モジュールの集計において、診療所と救急外来では表示される診断カテゴリの状況が大きく異なります。

診療の場 診断カテゴリの提示状況 記録の読み方の注意
プライマリケア診療所 提示基準を満たす第一診断カテゴリなし 受診理由としての記録頻度が集計の提示基準に達していないためであり、疾患の稀少性を示すものではない
専門科診療所 提示基準を満たす第一診断カテゴリなし プライマリケアと同様に基準を満たす集計行が形成されない
救急外来 症状名(失神・虚脱、めまい、倦怠感など)や基礎病態を含む複数のカテゴリが提示 急性期の暫定的な症状コード付与や併存症の登録が反映されやすい

救急外来で記録される第一診断カテゴリには、失神そのものの症状コードだけでなく、痙攣発作、低血圧、不安障害、アルコール関連障害など、鑑別や随伴症状に関連する多岐にわたる診断名が並びます。ただし、これらは受診時に付与された病名記録の集計であり、精密検査を経た確定診断の割合を反映したものではありません。

受診記録と臨床推論の乖離

受診理由モジュールに記録される「失神」は患者側の表現に基づく分類であり、医学的な定義による失神(一過性の全脳低灌流による自然回復性の意識消失)1と完全に一致するわけではありません。

  • 症状コードの混在: 救急外来の診断カテゴリには失神・虚脱だけでなく痙攣発作や意識の変化を示すコードが含まれます。受診時の記録は、てんかん発作など他の意識障害との区別が確定する前の分類を含みます。
  • 未記録の扱い: 同時に記録された受診理由がない場合でも、随伴症状や前駆症状が存在しなかった(陰性所見である)とみなすことはできません。
  • 検査と診断の乖離: 65 歳以上で入院した失神例の検討では、頭部 CT などの検査が診断や管理に影響した割合は低く、臥位・立位の血圧測定は診断への寄与が比較的大きかったものの、実施は一部にとどまっていました2。受診時の第一診断記録だけで原因を推定することは避ける必要があります。

見逃し時の損失が大きい状態

頻度の高さではなく、見逃したときの損害と判断までの猶予で選んだ項目です。確率は併記しません。対応は、各ガイドラインが明示している内容だけを書いています。

  • 即時

    失神の初期評価の心電図に、次のいずれかがある。鍛錬によらない覚醒時の持続する洞徐脈(40/分未満)または 3 秒を超える洞停止、Mobitz II 型または第 3 度房室ブロック、左右交代性の脚ブロック、心室頻拍または急速な発作性上室頻拍、QT 延長または短縮を伴う多形性心室頻拍の非持続発作

    不整脈性失神

    これらの心電図所見があれば、不整脈性失神が高い確度で疑われる(推奨クラス I・エビデンスレベル C)。診断が確実または高い確度であれば、追加の評価は不要で、治療を計画できるとされる。指針はこの項で具体的な時間枠を示していない。

場ごとの事前分布

主な受診理由(RFV1)としてこの訴えが記録された受診の、第一診断(DIAG1)の分布です。診断は ICD-10-CM の 3 桁カテゴリで、受診時の記録です。95% 信頼区間を括弧に示します。順位は標本誤差で入れ替わりうるため、 点推定の大小だけで読まないでください。

NCHS RVC: 1030 Fainting (syncope)

pie showData title 救急外来:第一診断の内訳(%)
  "R55 Syncope and collapse" : 57.4
  "R42 Dizziness and giddiness" : 2.7
  "I10 Essential (primary) hypertens…" : 2.4
  "F10 Alcohol related disorders" : 1.8
  "R41 Other symptoms and signs invo…" : 1.5
  "その他(上位以外・抑制を含む)" : 34.3

救急外来(非加重 527 件)。提示基準を満たした上位の診断だけを描き、残りは「その他」にまとめています。

受診時診断(ICD-10-CM 3 桁)診療所(プライマリケア)診療所(専門科)救急外来
R55Syncope and collapse
抑制抑制
57.4%50.7–63.9
R42Dizziness and giddiness
——
2.7%1.1–5.5
I10Essential (primary) hypertension
——
2.4%0.8–5.5
F10Alcohol related disorders
——
1.8%0.5–4.4
R41Other symptoms and signs involving cognitive functions and awareness
——
1.5%0.5–3.3
U07Emergency use of U07
——
1.4%0.3–3.8
R56Convulsions, not elsewhere classified
——
1.3%0.4–3.3
N39Other disorders of urinary system
——
1.3%0.3–3.4
I95Hypotension
——
1.3%0.4–2.8
F41Other anxiety disorders
——
1.3%0.2–3.7
この訴えが記録された受診数(非加重)37527
調査年2018・20192018・20192019・2020・2021・2022

Tier A: 米国 NCHS の公開マイクロデータ(NAMCS・NHAMCS ED)を複合標本設計で集計。受診単位。 「—」はその場の上位の診断に入っていないこと、「抑制」は NCHS の提示基準を満たさないため値を表示しないことを表します。 標準誤差・信頼区間は、匿名化のためにマスクされた公開版の設計変数による推定です。

併せて記録された受診理由

この訴えが(5 枠のどこかに)記録された受診で、同時に記録された受診理由の上位です。記録されていないことは、陰性だったことを意味しません。記録枠・患者の自発的な訴え・記録者の選択に左右されるため、問診の優先順位として読まないでください。

救急外来

  • RVC 1225Vertigo - dizziness22.3%(18.5–26.4)
    非加重 219 件
    • R55Syncope and collapse44.1%(34.6–53.9)
    • R42Dizziness and giddiness12.6%(6.0–22.4)
  • RVC 5810Accident, NOS (this code is for the verbatim “accident’ or if an injury is documented but not how it8.4%(6.2–11.1)
    非加重 83 件
  • RVC 1525Nausea8.3%(5.7–11.5)
    非加重 80 件
  • RVC 1210Headache, pain in head7.7%(5.7–10.0)
    非加重 77 件
    • R55Syncope and collapse28.6%(16.7–43.2)

この表が動く条件

上の分布を単独で一般化させないための節です。事前確率が大きく動く要因を挙げます。

診療の場(救急外来と診療所)
救急外来では多数の第一診断カテゴリが基準を満たして表示されますが、診療所では提示基準を満たす行がありません。診療の場による集計状況の違いを考慮する必要があります。
年齢層
若年層と高齢層では基礎疾患の保有状況や起立時の循環動態調節能が異なるため、診断カテゴリの構成が変わります。この表は年齢で層別していません。
併せて記録された受診理由
動悸、外傷、痙攣様運動などが同時に記録されているかどうかで受診時診断の付き方が変化します。ただし未記録は陰性を意味しません。
調査年と感染症流行
救急外来の集計期間には受診行動が大きく変動した時期が含まれており、診断カテゴリの分布に影響を与えている可能性があります。
第一診断の性格
救急外来で付与される第一診断は暫定的な症状名コードであることが多く、病因論的な確定診断とは一致しない場合があります。

他地域へ移すときの限界

  • 米国の受診理由モジュールに基づく統計であり、日本やハンガリーの救急外来やプライマリケアにおける診断分布への直接の移植性は未検証です。
  • 診療所で提示基準を満たす第一診断カテゴリが存在しないことは、診療所での失神診療の頻度や重要度が低いことを意味しません。
  • 救急外来の診断カテゴリ分布をプライマリケアの事前確率として適用することはできません。

参考文献・資料

  1. 1.2018 ESC Guidelines for the diagnosis and management of syncope(European Society of Cardiology (ESC)・2018)全文(Wayback の保存版)で確認した。初期評価が病歴(目撃者を含む)・臥位と立位の血圧を含む身体所見・心電図からなること、Table 5 で心原性を示唆する所見を労作中または臥位、動悸の直後の失神、若年での原因不明の突然死の家族歴、構造的心疾患・冠動脈疾患、不整脈性を示唆する心電図所見(二枝ブロック、QRS 0.12秒以上の心室内伝導障害、QT延長・短縮、早期再分極、Brugada型、非持続性心室頻拍、早期興奮など)としていること、起立試験の異常を収縮期20 mmHg以上・拡張期10 mmHg以上の持続的低下または収縮期90 mmHg未満への低下と定義していること、労作中の失神は心原性が疑わしく労作後の失神はほぼ常に反射性であること、Table 10 で誘因は失神で非常に多く発作ではまれ(光の点滅が代表)であること、発作の前兆は患者ごとに同じ型を繰り返し既視感・上腹部の上昇感・異臭を含むこと、失神のミオクローヌスは10回未満・不規則・非同期で意識消失の後に始まり、てんかん発作では20〜100回・同期して意識消失とほぼ同時に始まること、舌咬傷は失神でまれで舌尖、発作で舌の側縁であること、意識の回復は失神で10〜30秒、発作では数分に及びうること、尿失禁・発作中の開眼・発作後の疲労・顔面のチアノーゼは有用性が限られる所見に分類されていること、前失神で受診した患者の転帰が失神と同程度とする研究があること、合併症のない失神では頭部 CT・MRI を避け、脳波は失神が最も考えられる場合に推奨されず、頸動脈超音波の有用性を示す研究がないことを確認した。さらに推奨表(Section 12 の診断基準)の Consensus の全文抜粋で、覚醒時の持続する洞徐脈(40/分未満、鍛錬によらない)または 3 秒を超える洞停止、Mobitz II 型・完全房室ブロック、左右交代性の脚ブロック、心室頻拍または rapid な発作性上室頻拍、QT 延長・短縮を伴う多形性心室頻拍の非持続発作の心電図所見があれば不整脈性失神が高い確度で疑われること(推奨クラス I・エビデンスレベル C)を確認した。閲覧 2026-10-15
  2. 2.Yield of diagnostic tests in evaluating syncopal episodes in older patients(Archives of Internal Medicine・2009)PMC の全文(著者稿)で確認した。65歳以上の1,920人の失神による2,106入院で、頭部 CT は63%に行われたが、CT・心エコー・頸動脈超音波・脳波・心筋逸脱酵素はいずれも診断または管理に影響したのが5%未満、原因の決定に寄与したのは2%未満であり、38%にしか行われなかった臥位・立位の血圧測定が診断への寄与18〜26%、原因決定への寄与15〜21%と最も収率が高かったこと。閲覧 2026-09-28