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D10ICPC-2 · 7.0公開済み

嘔吐

筆者の題名:受診理由としての嘔吐

D · 消化器
別名
吐いてしまった食べたものを戻す何度も吐く
症状ノート
嘔吐

🧠 受診理由としての嘔吐は、診断名ではなく「胃内容物を吐き出した」という自覚や目撃を主訴に受診した記録である。 生態や病態生理の詳細は嘔吐を参照する。

受診理由としての記録は、確定診断の頻度ではなく、医療機関を受診した動機とその窓口での診断記録の広がりを示す。

診療現場による記録の違い

受診先や窓口の特性によって、集計基準を満たす診断の記録状況には明確な違いがある。

診療の場 第一診断の提示状況 主な記録の特徴
診療所(プライマリケア) 提示基準を満たす診断なし 嘔吐単独での受診記録が分散し、特定カテゴリへの集中が見られない
診療所(専門科) 提示基準を満たす診断なし 対象患者の専門分化により、主訴としての記録が分散している
救急外来 提示基準を満たす診断あり 急性の感染症、体液量減少、妊娠関連、症状名の診断など多岐にわたる

救急外来では急性胃腸感染症や体液量の減少だけでなく、頭痛や腹痛、あるいは症状名そのものが第一診断として記録されている。この分布は救急外来という受診経路と調査年における集計結果であり、地域全体の嘔吐の原因疾患の割合を表すものではない。

記録の解釈と診断分布の読み方

救急外来の第一診断に並ぶ「悪心・嘔吐」や「その他の腹部症状」のような症状コードは、受診段階で原因特定に至らなかった、あるいは対症療法が主となった記録枠を反映している。これらを特定の疾患群の除外根拠として扱うことはできない。

また、診療所の両区分において提示基準を満たす第一診断が存在しないことは、診療所で嘔吐を伴う疾患が稀であることを意味しない。受診理由が他の症状(発熱や下痢など)と併記されて分散した場合や、標本数の基準により表示が抑制された結果である。

併記された受診理由の有無についても、カルテの記録枠の性質に基づくものであり、未記録の項目を「その症状が存在しなかった(陰性所見)」と解釈してはならない。

見逃し時の損失が大きい状態

頻度の高さではなく、見逃したときの損害と判断までの猶予で選んだ項目です。確率は併記しません。対応は、各ガイドラインが明示している内容だけを書いています。

  • 即時

    5 歳未満の小児で、胃腸炎が疑われる嘔吐があり、ショックを示唆する症状・徴候がある

    ショック(脱水に伴うものを含む)

    二次医療機関へ緊急搬送する(遠隔評価でも対面評価でも。勧告 1.7.1.1・1.7.1.2)。対象は 5 歳未満の胃腸炎で、5 歳以上の小児や成人には当てはまらない。

  • 当日

    5 歳未満の小児で、胃腸炎が疑われる嘔吐があり、レッドフラッグの症状・徴候(全身状態の不良または悪化、反応性の変化、陥没した眼窩、頻脈、頻呼吸、皮膚弾力の低下など)がある

    臨床的脱水ショックへ進行するリスクが高い状態

    対面評価では、再度の対面評価または二次医療機関への紹介を検討する(勧告 1.7.1.2)。家庭で管理する場合は、悪化時に直ちに助けを得る方法を保護者へ説明する。再水分補給中、レッドフラッグのある小児には経口補水液以外の飲み物を与えない(勧告 1.4.1.1)。

場ごとの事前分布

主な受診理由(RFV1)としてこの訴えが記録された受診の、第一診断(DIAG1)の分布です。診断は ICD-10-CM の 3 桁カテゴリで、受診時の記録です。95% 信頼区間を括弧に示します。順位は標本誤差で入れ替わりうるため、 点推定の大小だけで読まないでください。

NCHS RVC: 1530 Vomiting

pie showData title 救急外来:第一診断の内訳(%)
  "R11 Nausea and vomiting" : 39.5
  "R10 Abdominal and pelvic pain" : 6.7
  "K52 Other and unspecified noninfe…" : 5.2
  "A08 Viral and other specified int…" : 3.1
  "B34 Viral infection of unspecifie…" : 2.2
  "その他(上位以外・抑制を含む)" : 43.2

救急外来(非加重 1,235 件)。提示基準を満たした上位の診断だけを描き、残りは「その他」にまとめています。

受診時診断(ICD-10-CM 3 桁)診療所(プライマリケア)診療所(専門科)救急外来
R11Nausea and vomiting
抑制—
39.5%35.3–43.9
R10Abdominal and pelvic pain
——
6.7%5.0–8.7
K52Other and unspecified noninfective gastroenteritis and colitis
抑制—
5.2%3.6–7.3
A08Viral and other specified intestinal infections
——
3.1%2.0–4.7
B34Viral infection of unspecified site
——
2.2%1.3–3.4
J06Acute upper respiratory infections of multiple and unspecified sites
——
2.0%1.0–3.6
O21Excessive vomiting in pregnancy
——
1.9%1.0–3.3
Z53Persons encountering health services for specific procedures and treatment, not carried out
——
1.8%0.8–3.7
K29Gastritis and duodenitis
抑制—
1.5%0.6–3.0
R19Other symptoms and signs involving the digestive system and abdomen
——
1.4%0.7–2.5
この訴えが記録された受診数(非加重)1211,235
調査年2018・20192018・20192019・2020・2021・2022

Tier A: 米国 NCHS の公開マイクロデータ(NAMCS・NHAMCS ED)を複合標本設計で集計。受診単位。 「—」はその場の上位の診断に入っていないこと、「抑制」は NCHS の提示基準を満たさないため値を表示しないことを表します。 標準誤差・信頼区間は、匿名化のためにマスクされた公開版の設計変数による推定です。

併せて記録された受診理由

この訴えが(5 枠のどこかに)記録された受診で、同時に記録された受診理由の上位です。記録されていないことは、陰性だったことを意味しません。記録枠・患者の自発的な訴え・記録者の選択に左右されるため、問診の優先順位として読まないでください。

救急外来

  • RVC 1525Nausea42.8%(39.7–46.0)
    非加重 2,116 件
    • R11Nausea and vomiting18.0%(16.0–20.1)
    • R10Abdominal and pelvic pain13.5%(11.3–16.0)
    • K52Other and unspecified noninfective gastroenteritis and colitis5.7%(4.5–7.2)
  • RVC 1545Stomach and abdominal pain, cramps and spasms36.3%(34.3–38.4)
    非加重 1,888 件
    • R10Abdominal and pelvic pain26.5%(23.6–29.6)
    • R11Nausea and vomiting15.4%(13.3–17.6)
    • K52Other and unspecified noninfective gastroenteritis and colitis5.5%(4.1–7.1)
  • RVC 1595Diarrhea19.0%(17.6–20.5)
    非加重 975 件
    • R11Nausea and vomiting24.7%(21.2–28.6)
    • K52Other and unspecified noninfective gastroenteritis and colitis14.6%(11.7–17.8)
    • R10Abdominal and pelvic pain11.5%(8.8–14.6)
  • RVC 1010Fever14.0%(12.5–15.6)
    非加重 720 件
    • R50Fever of other and unknown origin14.3%(11.0–18.1)
    • R11Nausea and vomiting11.6%(8.6–15.2)
    • B34Viral infection of unspecified site9.6%(6.7–13.2)

この表が動く条件

上の分布を単独で一般化させないための節です。事前確率が大きく動く要因を挙げます。

年齢層
乳幼児、若年成人、高齢者で想定される病態構成が異なりますが、提示されている統計表は年齢層で層別されていません。
妊娠の有無
妊娠可能年齢では妊娠悪阻などの産科的診断が第一診断に含まれますが、集計全体からは個別の割合は分離できません。
受診先の機能
救急外来では体液量減少や急性感染症などの診断が提示基準に達しますが、診療所では基準を満たす診断が抽出されていません。
他の主訴の併記状況
腹痛や発熱、下痢などが併せて記録されている場合、第一診断のカテゴリ分布は変わりうる。
調査対象年
感染症の流行状況や診療体制の変化を含む複数年のプール集計に基づいています。

他地域へ移すときの限界

  • 米国の救急外来受診の集計値であり、受診経路やトリアージ制度が異なる日本やハンガリーのプライマリケアへ直接適用することはできません。
  • 診療所で提示基準を満たす診断カテゴリがないことは、診療所において嘔吐の頻度が低いことを意味しません。
  • 救急外来の診断名には症状コードや未確定の病態が多く含まれており、原因疾患の真の疫学頻度として解釈することはできません。

参考文献・資料

  1. 1.Diarrhoea and vomiting caused by gastroenteritis in under 5s: diagnosis and management (CG84)(National Institute for Health and Care Excellence・2009)NICE 公式サイト(2009 年 4 月 22 日発行)の本文で、Table 1(脱水とショックの症状・徴候。レッドフラッグとして、全身状態の不良または悪化、反応性の変化、陥没した眼窩、頻脈、頻呼吸、皮膚弾力の低下などを挙げる)、勧告 1.7.1.1・1.7.1.2(ショックを示唆する症状・徴候があれば二次医療機関へ緊急搬送する。レッドフラッグがあれば対面での再評価または紹介を検討し、家庭管理する場合は悪化時の対応を保護者へ説明する)、勧告 1.4.1.1(再水分補給中、レッドフラッグのある小児には経口補水液以外の飲み物を与えない)を確認した。対象は 5 歳未満の小児の胃腸炎であり、5 歳以上の小児や成人の下痢・嘔吐には当てはまらない。閲覧 2026-10-15