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L08ICPC-2 · 7.0公開済み

肩の症状/愁訴

筆者の題名:受診理由としての肩の問題

L · 筋骨格資料確認
別名
肩が痛い肩が上がらない肩をけがした
症状ノート
肩痛

🧠 肩が痛い・上がらないという受診理由は、肩関節の一つの病変と同義ではない。 症状ノートの肩痛が局所の病態や関連痛を整理するのに対し、ここでは受傷・慢性症状・治療後の経過を含む受診の記録を見る。

診断名と通院の目的を分ける

記録 分布を読むときの注意
肩の症状を主な理由に受診 原因が肩関節内にあることの証明ではない
外傷に関する第一診断 慢性の肩痛だけの原因分布ではない
整形外科の経過観察に関するカテゴリ 新規の病気の発生数を示すものではない
症状や痛みのカテゴリ 原因疾患まで確定した記録とは限らない

専門科の列と救急外来の列では、初診・再診や紹介後の受診が占める割合も違いうる。受診先を変えると病気が変わるという因果ではなく、入口を通った集団の構成が異なると読む。

強い痛みを一つの原因へ結び付けない

英国の指針は、感染や未整復脱臼を当日の救急紹介とする一方、急性の外傷性腱板断裂では早い専門評価を求めている。強く痛む石灰沈着性腱炎は、これらと同じ意味の赤旗ではないが、強い痛みのため早い専門診療への紹介を要することが多い1。痛みの強さと、診断分布での多さと、紹介の緊急性は別々に捉える。

感染の評価では自己関節と人工関節の指針の対象も分ける2。鑑別や可動域からの考え方は肩痛に戻り、頻度の表から整復・手術・注射の適応を作らない。

見逃し時の損失が大きい状態

頻度の高さではなく、見逃したときの損害と判断までの猶予で選んだ項目です。確率は併記しません。対応は、各ガイドラインが明示している内容だけを書いています。

  • 当日

    肩関節の感染が疑われる

    化膿性肩関節炎

    当日の救急紹介を行う。発熱の欠如だけで自己関節の感染を否定せず、敗血症または敗血症性ショックを伴う場合は直ちに対応する。

  • 当日

    外傷性の肩関節脱臼が整復されていない

    未整復の外傷性肩関節脱臼

    当日の救急紹介を行う。頻度の表や痛みの強さだけで、単なる肩こりや慢性の肩痛として扱わない。

    BESS の指針は当日の救急紹介根拠:Shoulder Pain Diagnosis, Treatment and … 2021
  • 早期

    外傷による急性腱板断裂が疑われる

    急性の外傷性腱板断裂

    緊急に専門診療へ紹介し、可能な限り早い外来での評価につなげる。指針はこの項目に一律の時間数を置いていない。慢性の腱板の問題と同じ待機の考え方にしない。

場ごとの事前分布

主な受診理由(RFV1)としてこの訴えが記録された受診の、第一診断(DIAG1)の分布です。診断は ICD-10-CM の 3 桁カテゴリで、受診時の記録です。95% 信頼区間を括弧に示します。順位は標本誤差で入れ替わりうるため、 点推定の大小だけで読まないでください。

NCHS RVC: 1940 Shoulder symptoms

pie showData title 救急外来:第一診断の内訳(%)
  "M25 Other joint disorder, not els…" : 32.6
  "S42 Fracture of shoulder and uppe…" : 10.7
  "S43 Dislocation and sprain of joi…" : 9.2
  "S46 Injury of muscle, fascia and …" : 4.9
  "S49 Other and unspecified injurie…" : 4.2
  "その他(上位以外・抑制を含む)" : 38.5

救急外来(非加重 589 件)。提示基準を満たした上位の診断だけを描き、残りは「その他」にまとめています。

受診時診断(ICD-10-CM 3 桁)診療所(プライマリケア)診療所(専門科)救急外来
M25Other joint disorder, not elsewhere classified
抑制抑制
32.6%27.7–37.9
M75Shoulder lesions
—
19.1%9.6–32.2
1.6%0.7–3.0
S42Fracture of shoulder and upper arm
—抑制
10.7%7.9–14.1
S43Dislocation and sprain of joints and ligaments of shoulder girdle
抑制抑制
9.2%6.3–12.9
S46Injury of muscle, fascia and tendon at shoulder and upper arm level
抑制抑制
4.9%2.9–7.6
S49Other and unspecified injuries of shoulder and upper arm
抑制—
4.2%2.2–7.0
M54Dorsalgia
抑制—
3.6%1.8–6.3
M79Other and unspecified soft tissue disorders, not elsewhere classified
——
3.0%1.2–5.9
T14Injury of unspecified body region
——
2.4%1.1–4.8
R07Pain in throat and chest
——
2.1%1.1–3.7
この訴えが記録された受診数(非加重)29154589
調査年2018・20192018・20192019・2020・2021・2022

Tier A: 米国 NCHS の公開マイクロデータ(NAMCS・NHAMCS ED)を複合標本設計で集計。受診単位。 「—」はその場の上位の診断に入っていないこと、「抑制」は NCHS の提示基準を満たさないため値を表示しないことを表します。 標準誤差・信頼区間は、匿名化のためにマスクされた公開版の設計変数による推定です。

併せて記録された受診理由

この訴えが(5 枠のどこかに)記録された受診で、同時に記録された受診理由の上位です。記録されていないことは、陰性だったことを意味しません。記録枠・患者の自発的な訴え・記録者の選択に左右されるため、問診の優先順位として読まないでください。

救急外来

  • RVC 5810Accident, NOS (this code is for the verbatim “accident’ or if an injury is documented but not how it17.9%(14.8–21.3)
    非加重 211 件
    • S42Fracture of shoulder and upper arm14.3%(8.6–22.0)
    • M25Other joint disorder, not elsewhere classified13.9%(8.3–21.3)
  • RVC 1900Neck symptoms14.4%(11.4–17.9)
    非加重 164 件
    • M54Dorsalgia15.5%(8.7–24.7)
  • RVC 1050Chest pain and related symptoms (not referable to a specific body system)11.8%(9.2–14.9)
    非加重 125 件
    • R07Pain in throat and chest40.8%(31.9–50.2)
  • RVC 1905Back symptoms13.0%(10.7–15.5)
    非加重 135 件
    • M54Dorsalgia26.9%(17.7–37.9)
    • M25Other joint disorder, not elsewhere classified11.1%(5.9–18.4)

この表が動く条件

上の分布を単独で一般化させないための節です。事前確率が大きく動く要因を挙げます。

外傷と慢性の経過
新たな受傷と、長く続く痛み・動かしにくさを分けていない。同じ肩の訴えでも、急性外傷の指針がすべてに当てはまるわけではない。
肩の診断と関連する部位
受診時の診断には肩以外の痛みのカテゴリも現れる。肩を訴えたことだけから肩関節内の病変に限定した表ではない。
年齢・既往・手術後
年齢、脱臼歴、手術や治療の経過によって集団は変わる。専門科には経過観察の受診も含みうるが、この表はそれらで層別していない。
受診先と調査期間
専門科と救急外来では集団と調査期間が異なる。専門科で提示できる診断が少ないことを、原因の種類が少ないこととは読まない。
併せて記録された受診理由
外傷や頸部・胸部などの訴えの併記を別に示す。記録のない症状を陰性とせず、肩の訴えとの因果関係も集計だけでは決めない。

他地域へ移すときの限界

  • 米国の受診単位の推定であり、日本・ハンガリーへの移植性は未検証である。
  • 肩の専門診療に紹介された集団と、未選別の住民や一般診療の集団は異なる。診断分布をそのまま移さない。
  • 紹介の時間表現は英国の肩診療の指針による。地域の紹介体制、画像検査や整復の実施場所を、この集計が示すわけではない。

参考文献・資料

  1. 1.Shoulder Pain Diagnosis, Treatment and Referral Guidelines for Primary, Community and Intermediate Care(British Elbow & Shoulder Society / British Orthopaedic Association・2021)BESS が公開する本文の赤旗紹介の節で、感染が疑われる肩関節と未整復の外傷性肩関節脱臼は当日の救急紹介、外傷による急性腱板断裂は緊急紹介と可能な限り早い外来診察を要することを確認した。石灰沈着性腱炎は赤旗ではないが、強い痛みのため早い専門診療への紹介を要することが多いと記載される。閲覧 2026-10-15
  2. 2.Guideline for management of septic arthritis in native joints (SANJO)(European Bone and Joint Infection Society・2023)勧告 1〜3 の公開全文を確認した。自己関節の疼痛または炎症所見では、発熱の有無にかかわらず関節感染を考え、疑う場合の関節液採取は可能な限り速やかに行う。敗血症・敗血症性ショックの合併は即時の対応を要する。閲覧 2026-10-15