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N17ICPC-2 · 7.0公開済み

めまい/めまい感

筆者の題名:受診理由としてのめまい

N · 神経資料確認
別名
めまいがするふらふらする目が回るくらくらする
症状ノート
めまい前失神

🧠 受診理由としてのめまいは、病態の名前ではなく「ふらつき・回転感・立ちくらみ」をまとめて訴えた記録である。 症状ノートのめまいが持続と誘因から整理するのに対し、ここでは受診時にどんな集団として現れるかを扱う。

NCHS の受診理由分類では、回転性めまい、ふらつき、立ちくらみがひとつのモジュールに入る。前失神のような循環性の訴えも、患者の言葉では同じ「めまい」になりうる。分類そのものが、病態の区別より粗い。

このノートが持つのは、症状ノートには置けない次の 3 つに限る。

  • 場ごとの分布: 診療所と救急外来は別の集団であり、混ぜない
  • 併せて記録された受診理由: 記述統計であり、問診の優先順位ではない
  • 見逃し時の損失が大きい状態と、その根拠になるガイドラインの範囲

⚠️ 表の診断の欄にめまい自体の症状コード(R42 など)が上位に並ぶことがある。受診時点で原因診断が付いていない受診が多いことを反映していると考えられ、原因疾患の頻度ではない。

めまいは、救急外来でも「誰が診察するか」で到達する診断が変わる。GRACE-3 は、訓練を受けていない臨床医が通常診療で行う HINTS は不正確で、標準診療とは言えないと明記している。ここに書いた項目は、診察技能と施設の資源に依存する。一過性脳虚血発作や頸部動脈解離の記述は各疾患ノートにある。

見逃し時の損失が大きい状態

頻度の高さではなく、見逃したときの損害と判断までの猶予で選んだ項目です。確率は併記しません。対応は、各ガイドラインが明示している内容だけを書いています。

  • 即時

    成人の急性前庭症候群(24 時間を超えて続く持続性のめまい)で、複視・構音障害・嚥下障害・発声障害・測定障害・感覚異常のいずれか、HINTS の中枢性所見、または立位・歩行を支えなしでは保てない体幹の失調を伴う

    後方循環系の脳卒中

    眼振がある場合は、訓練を受けた臨床医が HINTS を行い、中枢性または判定不能であれば、拡散強調像と MRA を含む脳卒中プロトコルの MRI を行う。眼振が無い場合は、歩行の不安定さの程度で中枢性を区別する。HINTS を行える臨床医が居ない場合は MRI(拡散強調像)が次善とされる。発症早期の MRI は拡散強調像でも偽陰性がありうる(時間とともに感度が変わる)ため、早期の MRI の結果は発症からの時間を考慮して解釈する。この勧告は、明らかな内科的原因や明らかな中枢神経所見がある患者には適用されない。

  • 即時

    成人の急性前庭症候群で、HINTS が末梢型でも、新たに生じた一側性難聴がある

    脳卒中(前下小脳動脈領域の梗塞を含む)

    眼振のある急性前庭症候群では、ベッドサイドで指こすりによる聴力の確認を行い、新たな一側性難聴を脳卒中を見分ける追加の基準とすることが、HINTS が末梢型でも提案されている(条件付き勧告)。

  • 即時

    急性前庭症候群に、激しい頭痛・意識障害・片麻痺・座位または立位の保持困難など、頭蓋内出血を強く疑う神経症状を伴う。または再灌流療法の候補となる

    頭蓋内出血再灌流療法の適応となる脳卒中

    出血の除外や再灌流療法の判断が必要な場合、CT は MRI より速く、MRI が急性期治療を遅らせるなら CT を優先してよい。一方、ルーチンの頭部非造影 CT・CTA で中枢性と末梢性を区別することは推奨されず、CT が陰性でも脳梗塞は除外できない。

  • 即時

    めまいに、新たに始まった中等度〜重度の頭頸部痛(頭痛・頸部痛)を伴う。片頭痛・前庭性片頭痛として説明しにくい場合に特に

    椎骨動脈解離後方循環系の脳卒中(出血を含む)

    血管解離または出血を含む後方循環系の脳卒中を疑う。頸部の血管画像で椎骨動脈解離を診断できる(特に頸部痛や外傷がある場合)。血管危険因子が無いことは脳血管性の原因を除外しない。

  • 当日

    一過性・反復性(自然に起きる)のめまいで、一過性脳虚血発作が疑われる

    後方循環系の一過性脳虚血発作

    TIA が疑われる場合は、頭頸部の CTA または MRA で後方循環系の血管病変を除外することが提案されている(条件付き勧告)。

  • 早期

    体位で誘発されるめまいに、頭痛・視覚障害・片側難聴・複視・新たな歩行不能を伴う(典型的な良性発作性頭位めまい症では見られない)

    中枢性発作性頭位めまい症

    典型的な良性発作性頭位めまい症では見られない神経症状があるため、中枢性の原因(中枢性発作性頭位めまい症)を考える。

場ごとの事前分布

主な受診理由(RFV1)としてこの訴えが記録された受診の、第一診断(DIAG1)の分布です。診断は ICD-10-CM の 3 桁カテゴリで、受診時の記録です。95% 信頼区間を括弧に示します。順位は標本誤差で入れ替わりうるため、 点推定の大小だけで読まないでください。

NCHS RVC: 1225 Vertigo - dizziness

pie showData title 救急外来:第一診断の内訳(%)
  "R42 Dizziness and giddiness" : 37.0
  "R55 Syncope and collapse" : 9.0
  "H81 Disorders of vestibular funct…" : 4.9
  "I10 Essential (primary) hypertens…" : 2.0
  "R53 Malaise and fatigue" : 2.0
  "その他(上位以外・抑制を含む)" : 44.9

救急外来(非加重 1,055 件)。提示基準を満たした上位の診断だけを描き、残りは「その他」にまとめています。

受診時診断(ICD-10-CM 3 桁)診療所(プライマリケア)診療所(専門科)救急外来
R42Dizziness and giddiness
抑制抑制
37.0%33.0–41.3
R55Syncope and collapse
—抑制
9.0%6.9–11.6
H81Disorders of vestibular function
抑制—
4.9%3.1–7.5
I10Essential (primary) hypertension
抑制—
2.0%1.1–3.5
R53Malaise and fatigue
——
2.0%1.1–3.3
R51Headache
——
2.0%1.0–3.4
I95Hypotension
——
1.9%1.0–3.4
E86Volume depletion
——
1.8%0.9–3.2
F41Other anxiety disorders
——
1.5%0.4–3.6
I48Atrial fibrillation and flutter
——
1.4%0.6–2.9
この訴えが記録された受診数(非加重)23601,055
調査年2018・20192018・20192019・2020・2021・2022

Tier A: 米国 NCHS の公開マイクロデータ(NAMCS・NHAMCS ED)を複合標本設計で集計。受診単位。 「—」はその場の上位の診断に入っていないこと、「抑制」は NCHS の提示基準を満たさないため値を表示しないことを表します。 標準誤差・信頼区間は、匿名化のためにマスクされた公開版の設計変数による推定です。

併せて記録された受診理由

この訴えが(5 枠のどこかに)記録された受診で、同時に記録された受診理由の上位です。記録されていないことは、陰性だったことを意味しません。記録枠・患者の自発的な訴え・記録者の選択に左右されるため、問診の優先順位として読まないでください。

救急外来

  • RVC 1525Nausea18.8%(16.7–21.1)
    非加重 476 件
    • R42Dizziness and giddiness20.8%(15.3–27.1)
    • R07Pain in throat and chest7.0%(3.8–11.7)
    • R51Headache4.6%(2.4–7.7)
  • RVC 1210Headache, pain in head17.8%(15.6–20.2)
    非加重 461 件
    • R51Headache21.3%(16.1–27.2)
    • R42Dizziness and giddiness13.7%(9.0–19.6)
    • S06Intracranial injury4.9%(2.9–7.6)
  • RVC 1050Chest pain and related symptoms (not referable to a specific body system)11.8%(10.1–13.7)
    非加重 307 件
    • R07Pain in throat and chest46.0%(38.8–53.3)
    • R42Dizziness and giddiness5.5%(3.0–9.3)
    • R55Syncope and collapse5.1%(2.6–9.0)
  • RVC 1415Shortness of breath11.1%(9.1–13.3)
    非加重 280 件
    • R07Pain in throat and chest18.2%(13.5–23.6)
    • R42Dizziness and giddiness8.5%(4.9–13.5)
    • R06Abnormalities of breathing7.3%(3.9–12.3)

この表が動く条件

上の分布を単独で一般化させないための節です。事前確率が大きく動く要因を挙げます。

症状の時間経過
持続性(24 時間を超える)・自然に起きる反復発作・体位で誘発される発作で、疑う状態が変わります。NCHS の受診理由はこの時間経過を区別して記録しないため、表の分布はこれらが混ざった値です。
年齢層
高齢では血管危険因子、若年では椎骨動脈解離を考えます。この表は年齢で層別していません。
併せて記録された受診理由
悪心・頭痛・胸痛・息切れが同時に記録されると、受診時診断の分布が変わります。併存の表を参照してください。ただし記録されていないことは陰性を意味しません。
既往・危険因子
血管危険因子、心房細動、頸部の外傷の有無で、脳血管性の原因の確からしさは大きく変わります。この表はこれらを条件にしていません。
調査年
救急外来のプール値には COVID-19 の流行期(2020〜2021 年)が含まれます。単年の値は示していません。

他地域へ移すときの限界

  • 診療所の列は標本が少なく、診断の分布が提示基準を満たしません。救急外来の列が中心で、受診構造は日本・ハンガリーと異なります。
  • HINTS を行える臨床医や MRI が使える施設の有無で、実際に取られる行動は大きく異なります。GRACE-3 も、訓練の機会が整うまでは専門家の支援(ビデオ眼振記録や遠隔コンサルト)を前提としています。
  • GRACE-3 の勧告は成人の救急外来受診者を対象とし、NCHS の救急外来の列は小児を含みます。日本・ハンガリーについては同じ集計の実測を確認していません。移植性は未検証です。

参考文献・資料

  1. 1.Guidelines for reasonable and appropriate care in the emergency department 3 (GRACE-3): Acute dizziness and vertigo in the emergency department(Society for Academic Emergency Medicine・2023)全文を確認した(出版社掲載 PDF の複製による)。対象が成人の救急外来受診者(明らかな内科的原因や明らかな中枢神経所見がある患者には適用しない)であること、急性前庭症候群を「24 時間を超えて続く持続性のめまい」と定義していること、眼振のある急性前庭症候群では訓練を受けた臨床医による HINTS を中枢性と末梢性の区別に強く推奨し(勧告 2)、眼振が無い場合は歩行の不安定さの程度を、HINTS が末梢型でも新たな一側性難聴の確認を条件付きで提案していること(勧告 3・4)、訓練を受けていない臨床医が行うと HINTS は不正確であること、ルーチンの頭部非造影 CT・CTA は区別目的では強く反対していること、出血が疑われる場合や再灌流療法の候補では CT が MRI より速く先行してよいこと、一過性のめまいで TIA が疑われるときは頭頸部の CTA または MRA を提案していること、若年では椎骨動脈解離を考えることを確認した。閲覧 2026-10-15
  2. 2.Vascular vertigo and dizziness: Diagnostic criteria: Consensus document of the committee for the classification of vestibular disorders of the Bárány society(Bárány Society・2022)全文を確認した。急性の前庭症状に新たな中等度〜重度の頭頸部痛が加わる場合は血管解離や出血を含む後方循環系の脳卒中を疑うこと、頸部の血管画像は特に頸部痛や外傷がある場合に椎骨動脈解離の診断に使えること、発症 48 時間以内の初回 MRI(拡散強調像を含む)は最終的に脳卒中と判断される患者でも偽陰性がありうること、体系的な診察は早期の画像より正確であることを確認した。閲覧 2026-10-15