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P01ICPC-2 · 7.0公開済み

不安感/神経質/緊張感

筆者の題名:受診理由としての不安・緊張

P · 心理、精神資料確認
別名
不安でたまらない緊張がとれない落ち着かない
症状ノート
不安

🧠 「不安で来た」は、不安症という診断が付いたことを意味しない。 症状ノートの不安が正常な情動・病的な不安・身体疾患との関係を整理するのに対し、ここでは不安や緊張を受診理由として記録した集団を扱う。

同じ言葉でも数えているものは違う

言葉・集団 このノートとの違い
不安という情動 受診しない人にも生じる
全般不安症・パニック症 診断要件を持つ。訴えだけとは同一ではない
不安を理由とした受診 このノートの入口。原因や診断をまだ限定しない
第一診断に不安症が記録された受診 診断分布の一部であり、すべての受診の説明ではない

急性の発作と長く続く心配を一緒に集計しているため、表を見ても「この人はパニック症である」とは判断できない。パニック発作で受診した場合にも急性の身体的問題を評価するという指針と、分布表は矛盾しない1。

併存する抑うつや睡眠の問題は別の情報

抑うつや睡眠の訴えが同時に記録されることと、不安がそれらを引き起こしたことは違う。併存する訴えの表は、記録された組み合わせの集計に限る。「書かれていないから抑うつはない」とも読めない。

うつ病を伴う人への安全の確認は、その対象を明示した指針に基づく2。不安という受診理由の表から、個人の自傷リスクや入院の要否を計算しない。

診断分布には不安症以外のカテゴリも現れ、場によって提示できる項目も変わる。表示されない診断が存在しないと判断せず、症状の機序や鑑別は不安のノートへ戻る。

見逃し時の損失が大きい状態

頻度の高さではなく、見逃したときの損害と判断までの猶予で選んだ項目です。確率は併記しません。対応は、各ガイドラインが明示している内容だけを書いています。

  • 即時

    不安に現在も続く胸痛、著しい発汗、息苦しさなどが伴い、急性冠症候群が疑われる

    急性冠症候群

    救急で病院へ紹介する。不安・パニックという言葉が記録されていても、現在の身体的問題の評価を置き換えるものではない。

  • 即時

    うつ病を伴う成人で、本人または他者への差し迫った大きな危険がある

    自殺・自傷または他害の危険を伴う精神状態

    専門の精神保健サービスへ緊急に紹介する。希死念慮と意図を直接確認するという勧告は、うつ病を対象とする。不安の強さだけでは安全性を判断せず、具体的な危険と支援の必要性を評価する。

  • 早期

    成人の全般不安症で、強い不安と著しい生活機能障害に、セルフネグレクトや自傷・自殺リスクなどが重なる

    専門的な支援を要する重い不安症

    専門的な評価・支援への紹介を検討する。CG113 はこの紹介に一律の時間数を示していない。差し迫った安全上の危険がある場合を、早期という区分で待機させない。

場ごとの事前分布

主な受診理由(RFV1)としてこの訴えが記録された受診の、第一診断(DIAG1)の分布です。診断は ICD-10-CM の 3 桁カテゴリで、受診時の記録です。95% 信頼区間を括弧に示します。順位は標本誤差で入れ替わりうるため、 点推定の大小だけで読まないでください。

NCHS RVC: 1100 Anxiety and nervousness

pie showData title 診療所(専門科):第一診断の内訳(%)
  "F34 Persistent mood [affective] d…" : 1.2
  "F33 Major depressive disorder, re…" : 1.1
  "F11 Opioid related disorders" : 1.1
  "その他(上位以外・抑制を含む)" : 96.6

診療所(専門科)(非加重 153 件)。提示基準を満たした上位の診断だけを描き、残りは「その他」にまとめています。

pie showData title 救急外来:第一診断の内訳(%)
  "F41 Other anxiety disorders" : 54.8
  "F43 Reaction to severe stress, an…" : 2.7
  "F10 Alcohol related disorders" : 2.1
  "R41 Other symptoms and signs invo…" : 1.8
  "R45 Symptoms and signs involving …" : 1.8
  "その他(上位以外・抑制を含む)" : 36.8

救急外来(非加重 422 件)。提示基準を満たした上位の診断だけを描き、残りは「その他」にまとめています。

受診時診断(ICD-10-CM 3 桁)診療所(プライマリケア)診療所(専門科)救急外来
F41Other anxiety disorders
抑制抑制
54.8%47.9–61.5
F43Reaction to severe stress, and adjustment disorders
抑制抑制
2.7%0.9–5.9
F10Alcohol related disorders
——
2.1%0.7–4.9
R41Other symptoms and signs involving cognitive functions and awareness
——
1.8%0.5–4.7
R45Symptoms and signs involving emotional state
——
1.8%0.4–4.9
F32Depressive episode
抑制抑制
1.8%0.6–4.2
R06Abnormalities of breathing
——
1.5%0.2–4.9
Z53Persons encountering health services for specific procedures and treatment, not carried out
——
1.4%0.6–3.0
R42Dizziness and giddiness
——
1.3%0.4–3.1
F34Persistent mood [affective] disorders
—
1.2%0.2–3.4
—
この訴えが記録された受診数(非加重)55153422
調査年2018・20192018・20192019・2020・2021・2022

Tier A: 米国 NCHS の公開マイクロデータ(NAMCS・NHAMCS ED)を複合標本設計で集計。受診単位。 「—」はその場の上位の診断に入っていないこと、「抑制」は NCHS の提示基準を満たさないため値を表示しないことを表します。 標準誤差・信頼区間は、匿名化のためにマスクされた公開版の設計変数による推定です。

併せて記録された受診理由

この訴えが(5 枠のどこかに)記録された受診で、同時に記録された受診理由の上位です。記録されていないことは、陰性だったことを意味しません。記録枠・患者の自発的な訴え・記録者の選択に左右されるため、問診の優先順位として読まないでください。

診療所(プライマリケア)

  • RVC 2510Hypertension, hypertensive22.7%(12.5–36.0)
    非加重 32 件
  • RVC 1110Depression20.4%(12.9–29.8)
    非加重 44 件
  • RVC 4800Progress visit, NOS (Use only when the only information given is progress or follow-up)17.9%(10.1–28.3)
    非加重 34 件

診療所(専門科)

  • RVC 1110Depression33.1%(25.0–42.1)
    非加重 162 件
    • F41Other anxiety disorders25.5%(13.7–40.7)
  • RVC 1165Other symptoms or problems relating to psychological and mental disorders, NEC7.1%(3.9–11.7)
    非加重 37 件

救急外来

  • RVC 1110Depression16.5%(12.8–20.8)
    非加重 284 件
    • F41Other anxiety disorders13.6%(7.7–21.5)
    • R45Symptoms and signs involving emotional state3.2%(1.3–6.3)
  • RVC 1050Chest pain and related symptoms (not referable to a specific body system)15.0%(12.1–18.3)
    非加重 196 件
    • R07Pain in throat and chest50.5%(42.1–58.8)
    • F41Other anxiety disorders23.1%(15.3–32.6)
    • R00Abnormalities of heart beat1.7%(0.4–4.6)
  • RVC 1165Other symptoms or problems relating to psychological and mental disorders, NEC9.8%(7.6–12.4)
    非加重 166 件
    • F41Other anxiety disorders18.1%(8.5–32.0)
    • F32Depressive episode16.4%(8.5–27.3)
    • R45Symptoms and signs involving emotional state12.0%(7.0–18.8)
  • RVC 1415Shortness of breath9.7%(7.6–12.2)
    非加重 133 件
    • F41Other anxiety disorders20.9%(12.0–32.4)
    • R07Pain in throat and chest17.9%(9.3–29.6)
    • R06Abnormalities of breathing11.8%(5.7–20.9)

この表が動く条件

上の分布を単独で一般化させないための節です。事前確率が大きく動く要因を挙げます。

訴えと診断の違い
P01 は不安や緊張という受診理由であり、全般不安症やパニック症の診断基準を満たす人だけの集団ではない。
身体疾患・物質使用・服薬
急性の身体症状、物質の使用や離脱、治療中の薬剤などを条件にしていない。これらの有無で異なる集団を分けて読む必要がある。
年齢・経過・生活機能
突然の発作と長く続く不安、初診と治療中の再診を分けていない。症状の期間や生活への影響を揃えた推定ではない。
受診先
専門科の集団と救急外来の集団は異なる。診断名の違いを、訴えの真偽や身体疾患が否定された程度の違いとして読まない。
併せて記録された受診理由
抑うつ、睡眠の問題、胸痛、息苦しさなどの併記を別に集計している。記録のない訴えを陰性とせず、不安との因果関係も集計だけでは判断しない。

他地域へ移すときの限界

  • 米国で不安を理由として記録した受診の推定であり、日本・ハンガリーへの移植性は未検証である。
  • 心理的な困りごとをどのような言葉で伝え、どの診療先へ相談するかは地域や環境で異なりうる。住民調査の不安症の有病率とは分母が違う。
  • 参照する英国の勧告の対象は、それぞれ成人の全般不安症やパニック発作による受診、うつ病、疑われる急性冠症候群である。受診理由のコードだけから、いずれかの指針の対象と決めない。

参考文献・資料

  1. 1.Generalised anxiety disorder and panic disorder in adults: management (CG113)(National Institute for Health and Care Excellence・2020)勧告 1.2.37〜1.2.38、1.3.6 を本文で確認した。全般不安症で強い不安と著しい機能障害に自傷・自殺リスクやセルフネグレクトなどが重なる場合は専門的な段階への紹介を検討する。パニック発作で救急外来などに来た場合も、急性の身体的問題を除外するために必要な評価を行う。対象は成人の全般不安症とパニック発作による受診であり、発作があるだけでパニック症の診断が付くわけではない。閲覧 2026-10-15
  2. 2.Depression in adults: treatment and management(National Institute for Health and Care Excellence・2022)勧告 1.2.8〜1.2.9 を本文で確認した。うつ病の人には希死念慮と意図を直接尋ね、本人または他者への差し迫った大きな危険があれば専門の精神保健サービスへ緊急に紹介する。不安だけの人全員をうつ病として扱う勧告ではない。閲覧 2026-10-15
  3. 3.Recent-onset chest pain of suspected cardiac origin: assessment and diagnosis(National Institute for Health and Care Excellence・2016)勧告 1.2.1.3、1.2.1.7 を本文で確認した。胸痛に著しい発汗、悪心・嘔吐、息苦しさなどが伴う場合は急性冠症候群を考え、疑われて現在も胸痛がある人は救急で病院へ紹介する。不安やパニックという訴えがあっても、身体疾患を評価する必要はなくならない。閲覧 2026-10-15