受診理由ノート一覧へ
S14ICPC-2 · 7.0公開済み

熱傷/火傷

筆者の題名:受診理由としての熱傷・やけど

S · 皮膚
別名
やけどをした熱湯がかかった熱いものに触って皮膚が赤くなった

🧠 受診理由としての熱傷・やけどは、組織損傷の深度や原因を確定した病名ではなく、患者が「火傷をした」「熱いもので受傷した」と申し立てて医療機関を訪れた記録である。

受診理由の記録は、病因や重症度の判定結果ではありません。このノートでは、受診理由のコードと記録される第一診断カテゴリの読み方、および受診の場による違いを整理します。

診療の場による第一診断の現れ方

提示された集計において、救急外来では受傷部位に応じた熱傷・腐食の診断カテゴリが複数提示されていますが、診療所(プライマリケアおよび専門科)では提示基準を満たす第一診断カテゴリが存在しません。

診療の場 第一診断の集計状況 読み方の限界
診療所(プライマリケア) 提示基準を満たす診断なし 症例が存在しない、あるいは稀であることを意味しない
診療所(専門科) 提示基準を満たす診断なし 対象母集団の偏りや基準による集計抑制の影響を受ける
救急外来 頭頸部・上肢・手・下肢・足の各熱傷・腐食カテゴリが提示 急性期の外傷対応を行う受診集団の記録である

診療所で診断カテゴリが表示されないことをもって、外来診療所で火傷の診療が行われないと解釈してはなりません。集計基準による非表示と、実際の傷病頻度とは区別する必要があります。

受診理由と診断カテゴリの解釈

受診理由モジュールでは受傷部位ごとに細分化された訴えが記録されますが、これがそのまま同一部位の確定診断に結びつくとは限りません。

  • 主な受診理由の分母と診断の分母は一致しているが、臨床的な重症度や受傷機転までは反映されない
  • 第一診断として付与される分類は、受診時の記録に基づく集計であり、治癒過程や続発症の有無を追跡したものではない
  • 併記される受診理由がない場合でも、それ以外の症状や受傷部位が存在しない(陰性所見である)とみなすことはできない

熱傷・やけどにおける重症度と救急受診の適応

熱傷・やけどを主訴とする受診では、範囲・深さ・部位・原因に基づく重症熱傷の識別と、受傷後の二次性細菌感染の評価が求められる12。

  • 救急外来(A&E)受診・救急要請を要する熱傷: NHSの案内では、非常に大きいか深い熱傷・やけど、顔面・外陰部・臀部の熱傷・やけど、または酸・化学物質や電気による熱傷では直ちに救急車(999)を呼ぶか救急外来(A&E)を受診するよう定めている1。応急処置としては受傷後できるだけ早く(3時間以内に)冷たい流水で20分間冷却し、創部に固着した衣類は剥がさず、クリーム・油・バターの塗布や水疱の穿刺を避ける1。
  • 熱傷後の二次性蜂窩織炎と重症感染の評価: 経過中に蜂窩織炎を合併した場合は感染範囲をマーカーペンで記録して進行を追跡し(NICE NG141勧告1.1.3)、感染に不釣り合いな強い痛みや全身状態不良、壊死性筋膜炎・敗血症を示唆する所見があれば病院へ紹介する(勧告1.1.9、1.1.13〜1.1.14)2。

見逃し時の損失が大きい状態

頻度の高さではなく、見逃したときの損害と判断までの猶予で選んだ項目です。確率は併記しません。対応は、各ガイドラインが明示している内容だけを書いています。

  • 即時

    非常に大きいか深い熱傷・やけど、顔面・外陰部・臀部の熱傷・やけど、または酸・化学物質や電気による熱傷である

    重症・深達性熱傷化学熱傷・電撃傷顔面・会陰部熱傷

    直ちに救急車(999)を要請するか救急外来(A&E)を受診し、自身で運転して受診しない(NHS Burns and scalds)。5歳未満の小児の熱傷で対応に迷う場合は緊急相談窓口(NHS 111)へ連絡する。初期処置として受傷後3時間以内に冷たい流水で20分間冷却し、創部に固着した衣類は無理に剥がさず、クリーム・油脂類の使用や水疱の穿刺を避ける。

  • 当日

    熱傷後の経過中に二次性の蜂窩織炎・創部感染を伴い、感染に不釣り合いな強い痛み、急速・著明な症状の悪化、全身状態不良、または敗血症や壊死性筋膜炎を示唆する所見がある

    熱傷後の重症蜂窩織炎・壊死性筋膜炎敗血症

    壊死性筋膜炎や敗血症など重篤な病態を示唆する症状・徴候があれば病院へ紹介し(NICE NG141勧告1.1.13)、重篤な全身状態不良や経口抗菌薬に反応しない感染拡大、リンパ管炎などがあれば病院紹介または専門医への助言要請を検討する(勧告1.1.9、1.1.14)。

場ごとの事前分布

主な受診理由(RFV1)としてこの訴えが記録された受診の、第一診断(DIAG1)の分布です。診断は ICD-10-CM の 3 桁カテゴリで、受診時の記録です。95% 信頼区間を括弧に示します。順位は標本誤差で入れ替わりうるため、 点推定の大小だけで読まないでください。

NCHS RVC: 5705 Head, neck, and face (includes eyes) / 5710 Trunk area / 5715 Extremities / 5720 Burn, site unspecified

pie showData title 救急外来:第一診断の内訳(%)
  "T23 Burn and corrosion of wrist a…" : 27.2
  "T22 Burn and corrosion of shoulde…" : 12.4
  "T24 Burn and corrosion of lower l…" : 8.6
  "T25 Burn and corrosion of ankle a…" : 6.8
  "T20 Burn and corrosion of head, f…" : 5.5
  "その他(上位以外・抑制を含む)" : 39.6

救急外来(非加重 177 件)。提示基準を満たした上位の診断だけを描き、残りは「その他」にまとめています。

受診時診断(ICD-10-CM 3 桁)診療所(プライマリケア)診療所(専門科)救急外来
T23Burn and corrosion of wrist and hand
抑制—
27.2%19.1–36.6
T22Burn and corrosion of shoulder and upper limb, except wrist and hand
—抑制
12.4%6.7–20.3
T24Burn and corrosion of lower limb, except ankle and foot
抑制抑制
8.6%4.8–14.1
T25Burn and corrosion of ankle and foot
——
6.8%3.4–11.8
T20Burn and corrosion of head, face, and neck
—抑制
5.5%2.7–9.6
この訴えが記録された受診数(非加重)25177
調査年2018・20192018・20192019・2020・2021・2022

Tier A: 米国 NCHS の公開マイクロデータ(NAMCS・NHAMCS ED)を複合標本設計で集計。受診単位。 「—」はその場の上位の診断に入っていないこと、「抑制」は NCHS の提示基準を満たさないため値を表示しないことを表します。 標準誤差・信頼区間は、匿名化のためにマスクされた公開版の設計変数による推定です。

この表が動く条件

上の分布を単独で一般化させないための節です。事前確率が大きく動く要因を挙げます。

受診先(救急外来と一般診療所)
救急外来では部位別の熱傷診断が記録基準を満たす一方で、診療所では基準を満たす診断カテゴリがありません。診療の場により現れる診断分布が異なります。
受診理由モジュールの部位別コード
頭頸部、体幹、四肢、部位不詳など受診理由の記録単位が分かれており、訴えられた部位の指定状況によって診断カテゴリの構成が影響を受けます。
集計の提示基準(カットオフ)
一定の件数や割合に達しない診断カテゴリは集計上で非表示となるため、表示がないことを「その疾患が存在しない」と解釈することはできません。
受診経路と受傷からの時間経過
受傷直後の急性受診か、受傷後の処置や経過観察のための受診かによって、記録される受診理由や付与される診断の性質が変わります。
併記された受診理由の有無
熱傷以外の外傷や痛みの訴えが併記される場合がありますが、記録枠の有無は単に記録上の差異であり、未記録が陰性を保証するわけではありません。

他地域へ移すときの限界

  • 米国の受診理由統計に基づく集計であり、医療アクセスや初期対応体制が異なる日本やハンガリーのプライマリケアへそのまま移植することはできません。
  • 救急外来と診療所の集団特性は異なり、救急外来の診断構成を診療所の初期診療に当てはめて読むことはできません。
  • 診療所で提示基準を満たすカテゴリがないことは頻度の低さを意味しないため、他地域の外来における遭遇頻度の推計には使用できません。

参考文献・資料

  1. 1.Burns and scalds(NHS・2026)NHS Burns and scalds(2026年3月31日最終確認版)の本文を確認した。非常に大きいか深い熱傷・やけど、顔面・外陰部・臀部の熱傷・やけど、または酸・化学物質や電気による熱傷では直ちに救急車(999)を呼ぶか救急外来(A&E)を受診し、自身で運転して受診しないよう案内している。5歳未満の小児で判断に迷う場合はNHS 111へ連絡する。応急処置として受傷後できるだけ早く(3時間以内に)冷たい流水で20分間冷却し、創部に固着した衣服は剥がさず、冷却後はラップフィルムを巻かずに乗せ、クリーム・油・バターや絆創膏を使用せず水疱を破らないよう定めている。閲覧 2026-10-16
  2. 2.Cellulitis and erysipelas: antimicrobial prescribing (NG141)(National Institute for Health and Care Excellence・2019)NICE NG141(2019年9月27日発行)の勧告1.1.3、1.1.9、1.1.13、1.1.14を本文で確認した。蜂窩織炎では単回使用のサージカルマーカーペンで感染範囲の周囲に線を引いて進行を追跡することを検討し(1.1.3)、全身状態が極めて不良となった場合や感染に不釣り合いな強い痛み、発赤・腫脹の拡大があれば再評価し(1.1.9)、壊死性筋膜炎や敗血症など重篤な病態を示唆する症状・徴候があれば病院へ紹介する(1.1.13〜1.1.14)。閲覧 2026-10-16